カラバオといえば今年で活動歴24年になる大御所バンド。これだけ長い間活動していて楽曲のアイデアが尽きることはないのかと、少しひねくれた質問を投げかけてみた。
「アイデアはそりゃあ尽きることはあるさ。だからいろいろ頭を悩ませないとな(笑)。でも実際は、日々感じたことや自分の身に起こったことを詞や曲に託してるから、曲が作れなくなることはないな。それから、俺は心から音楽が作りたいっていつも思ってるから、あんまりお金のことは考えねぇんだよ。それにメンバー全員で協力すること。これがバンドが長く続いてきた理由だと思うよ」。
なるほど。そんな彼の真摯な姿勢をよく表しているのが前出の「ツナミ」であり、彼の呼びかけでいろんなアーティストが参加したチャリティアルバム『サップ・ナムター・アンダマン』なのだろう。
「『ツナミ』を作った時、俺はとても悲しい気持ちだった。多くの人が亡くなったし、俺の知り合いでも亡くなった人がいる。犠牲者のために自分にできることは音楽しかないからな。俺の曲が少しでも慰めになったり、売り上げ金で寄付できればいいと思ったんだ」。
このチャリティアルバムがきっかけで世界中の人々にエート・カラバオとカラバオの名前が広く知れ渡った。
「そのおかげでこうして日本にも来ることができて嬉しいね」とエート。さらにタイフェス終了後タイに帰国した後は、「スマトラ沖地震やテロの被害者たちのためにヨーロッパとアメリカを回るんだ」と話してくれた。駆け引きや損得を全く度外視し、社会に対する疑問や怒り、悲しみを曲に託し、世間に問うエート、そしてカラバオ。彼らがタイでどうしてこれほどまでに支持されるのか、その理由がエートと話してよくわかった。
最後に日本で行きたい場所はどこかと聞いてみると「富士山。キレイで静かなお寺。それから田舎の農家とか日本の普通の人の暮らしを見たいね。ショッピングは嫌いだよ」との答えが帰ってきた。まったく、彼らしい答えである。