ユネスコの世界遺産に指定されている文化遺産は、タイ国内には3つある。スコータイ、バーン・チアン、アユタヤーで、そのうちバンコクから最も近くて手軽に行けるのがアユタヤーだ。 日本の旅行会社が企画したパッケージ旅行にはこのアユタヤーへのバスツアーが必ず組み込まれているが、バンコクから日帰りで行ける世界遺産はここだけだから、それは当然だろう。規模や保存状態からみればスコータイにはかなわなくともアクセスの容易さでははるかに勝るし、リバークルーズもできれば象にも気軽に乗ることができる。アユタヤーはいまもタイ観光の目玉スポットなのである。 遺跡群は整備され、遺跡公園として公開されているが、寺院や遺跡の拝観料は公園としてではなく、それぞれの入口で支払う仕組みになっている。 通常は日中に観光するが、今回は趣を変え、夕暮れになってから出かけてみよう。日没に合わせて始まる遺跡のライトアップを見るためだ。 アユタヤーの町は14世紀から18世紀にかけてこの地を治めたアユタヤー王朝によって生まれ、繁栄した。この間、王家は変遷し国王も入れ替わったが国家は栄え、この一帯を広範囲に支配した。王朝の威光は海外にもおよび、東は琉球王朝とも深い関係を保った。地酒の泡盛が造られるようになったのも山田長政が活躍できたのも、この当時の王朝間交易のおかげである。
日中に見学すると、その痛々しさがよくわかる。しかし、ライトアップされた夜間に眺めると、その傷み具合が味わいへと変わる。崩れた壁や柱の跡が、光や色の加減で幻想的な雰囲気に変わるのだ。 ライトアップされるのは、公園内ではワット・プラマハータート、ワット・ラーチャブラナ、ワット・プラシーサンペット、ワット・プララームなどの重要寺院で、川向こうではワット・チャイワッターナーラームが青白い耀きを放っている。遺跡内には入れず外からのみの見学となるが、日中の観光後に時間があるならマッサージなどで日暮れを待ち、ライトアップを見てからバンコクに戻るのも悪くはない。